04.09.16(THU) 皇海山・鋸山 足尾山塊


 百名山を完登しようなど大それた気持ちは無いが、群馬にある百名山の端くれくらいは登っておきたいものである。皇海山はそんな意味で気になる山だった。先日ドンピシャ登山さんのHPで栗原川林道が通れることが分かったので、利根村役場に確認の上、早速何時ものOさんと出かけてみた。


コース:皇海橋登山口8:25→不動沢のコル10:00→皇海山山頂10:55-11:30→不動沢のコル12:40→鋸山山頂13:25-13:40→不動沢のコル14:15→皇海橋登山口15:30 (所要時間7時間05分)

 皇海山山頂から不動沢のコルまでの時間は本文に記した事情で実際の倍くらいかかっている。

 栗原川林道は、吹割の滝近くの追貝から入る。非舗装林道を皇海橋まで約45分くらいである。非舗装林道としては走り易いが、かなり悪い所もある。しかし気をつければ乗用車でも充分通行可能である。

 駐車場は皇海橋の両側に3〜40台程度可能である。トイレあり。
皇海山、バックのピークは日光白根山


 ドンピシャ登山さんは沼田大間々線から栗原川林道へ入って皇海橋に向かったが、我々は追貝から入った。昔、林道入口が分からずに参ったが、今は案内が親切で車で走りながらでも見落とすことはない。林道に入ってしまえばほぼ一本道である。
 登山口の皇海橋も林道としては大きな橋で、登山口を見落すような事はない。上流に向かって左にトイレがあり右に登山口、両方に駐車スペースがある。我々が着いた時既に15〜6台の乗用車と2台の小型バスが駐車していた。
 
 
追貝原の栗原川林道入口:要所のガイドは大変分かりやすい。


 登山口は林道の延長のように広くて新しい。その道を登って砂防堤を巻くと登山道らしくなる。後は踏跡とテープの目印に従ってかなりの水量の沢を詰めて行く。沢の分岐には案内があるが案内があっても左の沢に入りやすいところがあり要注意である。途中で追いついて前後して登った74歳の男性に”そっちじゃないよ”と声を掛けてもらわなかったら、我々もかなりの時間をロスする所だった。
 


 不動沢のコルまではほとんど視界はきかずひたすら登る。コルに抜けるとやっと少し視界が開け、その名の通りの鋸山の鋭い岩峰を見ることが出来る。槙やダケカンバの広い尾根を登ると更に視界が開け、遠く浅間山の噴煙を見ることが出来た。この日何度か小噴火があったことを後で知った。
 山頂直下の狭い崖のところで山頂から下ってきた同年配女性主体の団体さんに遭遇してしばらく道を譲る。東京から来た26人ほどのグループで、ツアーで三日続けて百名山を登るそうである。”女はばてないよ!”とか元気なもんである。
鋸山

浅間山噴煙遠望 倒木の風景

 所沢から来たと言う男性二人組みの後に付いて山頂へ。山頂は林の中にあり展望はほとんど無い。それでも木立の間から男体山や日光白根を見ることが出来る。いいカメラポジションを探して林の中に入る人は足元にご注意を。踏んで滑って尻餅なんていうのは最悪ですよ。
 山頂にはすでに14〜5人の団体さんが休憩していた。所沢から来た二人組みと記念写真を撮りあってから昼食にする。74歳の男性も到着。それにしてもまだ11時である。予定より1時間も早い。その後改定されているのかも知れないが「群馬の山歩き130選」(平成2年初版第一刷)によると皇海橋から山頂までのコースタイムは3時間50分である。我々は休憩タイムも入れて2時間30分で登っている。ちなみに「山スパート」によると標高差792m、距離約3kmでコースタイム2時間50分である。自慢にならない我々の脚力から考えてもコースタイムとしてはこちらの方が妥当である。[山歩き・・」はミスプリか何かで1時間多いのではないだろうか。

 時間が早いので鋸山へも登ることにして早めに山頂から下る。不動沢のコルに着いて時間記録のために写真を撮ろうとしたら、腰のベルトに付けたカメラがケースごと無い。ええっ!!と吃驚、そしてがっくりである。鋸山は諦めてベソをかきながらカメラを探してゆっくり皇海山の山頂に向かい登り返す。3分の一程登り返した所で下ってきた所沢の二人組に会う。聞いてみたら拾って持ってますよと出してくれた。何と言う幸運、感謝感激である。
皇海山山頂で記念撮影

 カメラが出てきて元気が出たので諦めた鋸山へまた登ることにして、所沢のお二人とは不動沢のコルでお礼を言って別れた。
 不動沢のコルから鋸山は標高差140m、距離0.5km、コースタイム往復1時間余りである。しかし槍の穂先のような鋭い山影は中々迫力があり、ちょっとした冒険心をくすぐる存在である。山頂直下に落石があったら避けようがないような長い鎖場(ロープ)と2〜3mの岩場があって、スリルはあるが疲れた身体でちょっとヤバイかなとビビッている時、丁度山頂から同年輩の男性が一人降りてきて、もう少しだよと声を掛けてくれた。水が切れて苦しかったが思ったより簡単に山頂に立てた。我々が山頂に着いた時残念ながら皇海山山頂には雲がかかり始めていた。
本当に有難うございました。不動沢のコルでカメラを拾ってくれたお二人(中央と右)と、探しに一緒に登り返してくれたOさん(左)。


鋭鋒?鋸山 栗原川の渓谷


 山頂でひと休みしてエネルギーを補給し後は淡々と下ってきた。駐車場には車は一台も残っておらず我々が最後だった。日帰り温泉は白沢"望郷の湯”で、夕日の野天風呂でのんびりしてきた。

 深田久弥の百名山によれば、この山は徳川時代、明治、大正、そして久弥の登った昭和と、それぞれの時代にそれぞれの時代背景と価値観で登られ何度も忘れ去られている。そして今又、久弥の書いた百名山が皇海山に新しい価値をあたえ、多くのオジサンオバサン(あるいは我々のようなジジババまで)が列を成して登る時代になった。久弥もあの世で”またかい”と笑っているだろう。
 

 久弥が登山記の一部を紹介しているが、大正8年の皇海山は”・・・今更日本アルプスでも有るまいというつむじ曲がりの連中が・・・、自分で道を見つけ、迷い、藪を漕ぎ、野しゃがみをし、ようやく頂上に達するという、本当の山登りの楽しさが味わえる山・・・”だったようである。本当の山登りの楽しさは個人の好みの問題だから、これが本当だのどうだの野暮を言うつもりはないが、歴史が繰り返すものなら今の賑わいも、いずれ林道も廃れ、もとの深山に戻っていくことが有るのかもしれない。


ノコンギクとキオン 山頂の紅葉

 この季節、花はほとんど無いが沢沿いにはノコンギクとキオンがたくさん咲いていた。花を付けたトリカブトを一株だけ見た。山頂ではダケカンバだろうか紅葉が始まっており、この付近で標高2100mに紅葉前線が達したことを告げていた。紅葉シーズンの始まりである。






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