04.06.23(WED) 浅草岳 中越(新潟)


 私は20年も低山歩きをしているのに、自生しているヒメサユリを一度も見たことが無い。昨年尾瀬ガ原の水芭蕉も初めて見たが、もぐりと言われても仕方が無いところがある。先年山登りの先輩のTさんから下田村の五輪平農園のヒメサユリの素晴らしく綺麗な写真をメールで頂いた。それ以来気になっていたが今年も機会を逃がしたものとばかり思っていた。先日トラベエさんのHPを見たら浅草岳のヒメサユリはこれからだとある。それならと台風一過の23日、みんな飛ばされちゃったかなと心配しながら、妻と浅草岳に出かけた。


コース:大駐車場9:00→ネズモチ平登山口9:15→前岳分岐点11:10→浅草岳山頂11:40-12:20→カヘヨノボッチ13:05→桜ゾネ登山口14:05→大駐車場14:40 (所要時間5時間40分)

駐車場までの道は真近になると非舗装で狭くなるが、くねくねした所も少なくおおむね快適な舗装路である。分かりにくい所も無い。舗装の延伸工事と思われる道路工事区間が一ヶ所あった。
 タニウツギが今を盛りに沢山咲いている。
山頂付近のヒメサユリ


大駐車場と林道のゲート:
 山渓の分県ガイドによると桜ゾネ登山口の駐車場まで車が入れるように書いてあるが、行ってみると展望台への分岐を過ぎるとすぐ、写真のような大駐車場が新設されていて、前方の林道にはゲートがあって一般車両は入れない。(地元の民宿に止まれば桜ゾネ登山口まで送迎してもらえるようである。)正面左のログハウス風に見える小屋にトイレがある。右側の白い小屋の前がゲート。背景の右端の丸いのが浅草岳山頂(?)。
大駐車場


 桜ゾネ往復のつもりで行ったのでゲートには戸惑ったが、どうせ歩くならネズモチ平登山口から周回コース一回りと気を取り直してゲートから歩く。すぐネズモチ平登山口で古びた道標がある。入っていくのにあまり心が躍らない雰囲気である。勿論入ってしまえばどこもそれほど違いがある訳けもなく、似たような登山道の風景がある。赤城山より山深く何となくお腹の空いた熊さんと鉢合わせしそうな気がするだけである。それでも見栄を張って鈴は鳴らさなかった。


 道は森の中の小沢を渡りねちょねちょのぬかるみを行く。道の上にぶゆが黒い霧のように渦巻いていて腕と言わず顔と言わずまつわりついてくる。”いてっ!このやろ”。これでも台風が大分吹き飛ばしてくれたはずなのに。
 ブナの大木や雑木の下のギンリョウソウやホウチャクソウ、小さいくせに赤い実を沢山つけたダルマの木(アオキ)など眺めながら歩くうちに勾配は少しずつきつくなる。木の間からお隣の守門岳が厳しい山肌を見せてくれる。
守門岳


 途中山菜を背中一杯に背負った土地のお母さん(我々より少し歳上かな)が下りてきた。イメージ通りのお母さんだ。帰ってから整理が大変なんですよ。と話していた。しばらくしたらまったく同じ格好のお母さんが又下りてきた。ご姉妹か双子かもしれない。熊怖くないのかな?
 勾配は益々きつくなり木の根や岩にすがって崖を登る頃、崩壊して明るく開けた崖に突然ヒメサユリが咲いていた。”見てご覧、咲いてるよ”、一昨日の夜、通り過ぎたはずの台風なんて、まったく関係ないと言わんばかりに。”自然て強いなあ!”。まあ考えて見れば、あの程度の雨や風に吹きちぎられるような花なら、最初からこんな厳しい所に生えはしない。重そうに花を揺らしていた庭のアジサイだって、台風に負けたりしなかった。ましてどんなに可憐に見えたって、自然は自然に負けたりしないんだ。当たり前だけど感動したよ。
 この崖にかなり沢山咲いているヒメサユリは、もう蕾はほとんど無く週末まで持たないかもしれない。
ネズモチ平コースのヒメサユリ


 振り仰ぐ桜ゾネのカヘヨノボッチやそれに続く前岳や優しく丸い浅草岳の山頂はまだまだ高く、気が抜けない。春先から初夏に掛けて気管支の調子が悪い妻も、今日はどうした訳か快調である。前岳の分岐点に登りつく頃には、先行していた伊勢崎から来た4人グループに追いついていた。
 一息入れて巨大な残雪の雪渓を渡って山頂への木道を歩く。シラネアオイが一つ残っている。
 山頂直下の休憩場所の周りはヒメサユリのお花畑、蕾もまだ一杯ある。週末は見頃だろう。ワタスゲもゆれている。既に何人かの人が到着していて、後からも来たのでかなりの人達が居た。取り合えず山頂に行って記念撮影、360度の展望を楽しむ。
カヘヨノボッチ


鬼ガ面山と越後三山 浅草岳山頂


 登ってきた北西側の守門岳は言うまでも無いが、反対側の目の下に田子倉湖が見える。こちら側の斜面はかなり急である。その先遠くに尾瀬の燧岳の二つの山頂がかすんでいる。迫力ある鬼ガ面山の上に越後駒ケ岳、その更に上に中ノ岳と八海山が並んでいる。僕に見当が付くのはその程度である。
 山頂直下の板敷きの2箇所の休憩場所はかなりの人達が食事中なので、ヒメサユリの写真を沢山撮った後、遠慮して雪渓の上の登山道の石の上に座って鬼ガ面山とにらめっこしながら食事にした。


 下りは桜ゾネコースを選ぶ。雪渓の融けた崖の上に幾つも花を付けたシラネアオイが見えたが遠くて残念。足元にはイワカガミ、ゴゼンタチバナ、アカモノ等お馴染みの花が咲いている。カエヨノボッチの手前の急な登り道にもヒメサユリが沢山咲いていた。
 桜ゾネコースは歩きやすい尾根道かと思っていたら、ヒメサユリの人気のせいか、かなり踏まれて痛んでおり、お世辞にもいい道とはいえない。ネズモチ平からの道に比べれば、危険とぶゆが少ないのが救いかも。どちらがいいとも言えない。どちらも悪いかな?まあ多少覚悟してどうぞ。
山頂付近のヒメサユリ

 桜ゾネ登山口には八海山大神の祠と浅草の鐘と言われる仏式の鐘がある。駐車場には地元の民宿の車が一台止まっていた。地元の人は自由に入れるらしい。
 下りで一緒になった長岡のご夫婦と前後しながら大駐車場への林道を下る。雪が消えたばかりの林道の土手の上に花を一杯つけたサンカヨウが沢山咲いている。とても写真の撮れる距離じゃない。簡単に登れるような土手でもない。土手の下にこぼれた小さなサンカヨウが咲いていた。
林道のサンカヨウ





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