ときタマ日記 2012年6月15日(金)


故 郷


JR横須賀駅


 兄弟会を兼ねた墓参で一泊で横須賀に帰る。時間があったので軍港巡りの遊覧船で港内を一周、駅前のヴェルニー公園を散歩し、JR横須賀駅を覗いて来た。横須賀は様変わりしてしまったが、街はずれの駅はとり残され、私が子供の頃のたたずまいのままである。駅構内も切符売り場と改札が自動化されただけで昔のまま。横須賀線の開通は明治22年の6月16日(なんと明日だ)だそうだが、この駅舎は私と同じ年生まれで、同じ激変の時代を生きた仲間である。なんか共感できる姿じゃないか。


   
  ヴェルニー公園と新市街地
白い船が軍港巡りの観光船
 



 大和、武蔵に次ぐ3隻目の戦艦信濃を造ったガントリークレーンと小さな造船所のあった跡地は、ダイエーのショッパーズプラザ が建ち、EMクラブの跡地は高層のホテルや劇場になっている。私のまったく知らない新市街地だ。私には昔EMクラブの隣にあった市民会館が懐かしい。アメリカ映画の2本立てをやっていて30円くらいで見ることが出来た。中学生の頃、幼稚園児の弟を連れて毎週のように見に行った。母は下に生まれた2人の妹の世話で忙しかったから、弟を私に預ければ手が省けて助かったのだろう。幼稚園児はタダだからね。


   
  ヴェルニー公園  


 ヴェルニー公園は新市街地と横須賀駅の間をつなぐ公園で、港に面したウッドデッキやバラの散歩道の続くいい雰囲気の公園になっている(戦後は臨海公園と呼ばれたただの空き地だった)。海軍の記念碑や横須賀の軍港を開いた、群馬にもゆかりの小栗上野介とフランス人技師ヴェルニーの銅像などがある。上野介が斬首された今の群馬県倉淵村権田の烏川水沼河原の石などが置かれている。軍港の前だからやはり同年代以上の男性の姿が多いかな。


   
  日本の潜水艦  


 軍港巡りは土日は予約が必要なほど人気があるそうだ。一時間ごとに出航し約40分で横須賀港を一周する。一番近くの日本の潜水艦のデッキで白い制服の士官?が帽振れの挨拶を送ってくれる。観光船が出航するたびにサービスで挨拶してくれるのかなあ。でも初めてだとサプライズだね。


 
  174は日本のイージス艦”きりしま”  


 軍港だからね。他に空母のようなデッキをもつ新造艦”いせ”や潜水艦救難母艦”ちよだ”、米海軍の原潜などが入港中。横須賀を母港とする原子力空母ジョージワシントンは出航中だった。日産の巨大な自動車専用運搬船も見られるよ。



   
  空母みたいなデッキをもつヘリコプター搭載護衛艦”いせ”  


 物騒な写真ばかりなので、この辺にしとこうね。もう何十年とお目にかかっていない戦艦三笠にもちょっと寄って外からだけ見て来た。 


   
  戦艦三笠と東郷元帥  


 三笠ほど栄光と屈辱の記念艦もないだろうね。敗戦後大砲も煙突も内装もすべてはぎとられて、僅かな期間だが中央のガンデッキにはかまぼこ屋根が掛けられ、米軍専用のダンスホールにされたことがある。返還後は一時海洋博物館に改装されたりしたが、日本が落ち着くとともに復元が進められて現在の姿がある。張りぼての偽物になってしまったけれど、艦体だけは本物だ。しかしあまりにもひどい戦争と敗戦によって、三笠には暗い影がはり付いてしまった。長い時間をかけて少しづつ影は消え、かっての栄光の三笠に戻る時が来るのだろうか。


   
  金ピカの菊の紋章  


 菊の紋章は私が子供の頃は勿論ペンキで艦体と同じ色に塗られていたはずだが、今回行ってみると金ピカに輝いていた。艦首は昔は大きく高く見えたが、今見ると艦の重量感に対しては随分小さな低い乾舷であるように見える。

 対岸には白いタグボートが見えているが、当時は壊れた岸壁で、奥は産業廃棄物置き場のようなところで、今考えればのずいぶん危険できたない場所だったような気がするが、夏休みになると近所の悪ガキ達と毎日のように泳ぎに行った。勿論馬堀海岸にも走水にも出掛けたが、ここが一番手軽に遊びに行ける面白い場所だった。対岸から三笠まで泳いで渡れれば一人前で、私は遅かったが5年生くらいで渡れた。壊れたはしごで三笠の岸壁に登り、海側のいかりの鎖を登って鎖穴からデッキの上に出て探険したのを覚えている。海は汚れ始めていたが岸壁にはカラス貝が厚く積もるようにびっしり付き、壊れた岸壁の岩と海藻の間には、カニやダボハゼが無数にいた。

 私が社会に出た頃、三浦半島の海は海水浴場を除いてすべて遊泳禁止になった。その後、岸壁も磯も赤く焼け、カラス貝もダボハゼも海藻もすべて消えてしまった。そんな時代が長く続いた。今日岸壁をのぞいてみると、カラス貝はついていないが、牡蠣がたくさんついているのが見え、浅い海を小魚や箱フグが泳ぐのが見えた。横須賀の海が復活してきているのを信じたい。



トップページへ 前へ リストへ 次へ



           
inserted by FC2 system