波紋

　鳥はじっとしている。でもたまに動くと足元から彼の意思とは関係なく波紋が広がって行く。波紋はどんどん広がり、他の波紋や風波に混ざりあい消えてゆく。早く消えてほしい波紋も、何時までも揺れ続けてほしい波紋もあるよね。でも波紋はもともと小さくても弱くても簡単には消えないものらしい。携帯電話からの小さな波紋は混ざり合っていてもちゃんと相手とつながるよね。火星を這いまわっている小さな探査機からの微弱な波紋は、高精細な画像や岩石の成分まで地球に伝えて来る。宇宙背景放射と言われるマイクロ波のノイズは約150億年前に宇宙が誕生した時のビックバンの名残だという。太平洋の波紋を細かく分析すれば東北大震災がいつ起こったか、何処が震源か、津波の規模がどの程度のものであったか、そんなことも分る時代が来るかもしれないね。