尾根道        49×70cm        11028


 1985年、妻と二人で初めての北アルプス、白馬岳を歩いた。上信越道もオリンピック道路もない頃、白馬岳は遠かった。長野泊で鬼無里を越え、何処かの峠道から見た北アルプスの巨大な山々の連なりに息を飲んだ。どれが白馬か区別もつかなかったが、今日の内にあの稜線まで登る、大丈夫かいな、と不安になった。猿倉から大雪渓に長く続く登山者の行列に紛れて不安なく登った。ばてた葱平。初めての山小屋泊の妻のために予約した牢屋のような個室、真夜中に起こされて付き合わされた真っ暗なトイレ。翌日は山頂の日の出、振返れば正面の剣岳、お隣の唐松、五竜、鹿島槍から、遠くかすむ槍、穂高まで重畳する峰々の大展望と、斜面を埋め尽くすお花畑に疲れを忘れて歩いた杓子、鑓の尾根道。出会った人々。鑓温泉はギャラリーが多すぎとても入れない。小屋に泊まれば楽が出来たはずだが、鑓温泉小屋はまったく泊まる気にならない佇まいだった。猿倉までの下りの長かったこと。白馬の駅前で紹介された民宿泊で、次の日、戸隠神社をのぞいて食事した程度で、クーラーもない車の窓全開で一日がかりで帰って来た。杖代わりに持って行ったスキーのストックは大成功で、その後山用のストックが普及してくるまで使い続けた。




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