2010.02.07(日) 鍋割山 赤城山


 10時近くに家を出て登れる山なんて赤城山しかない。その赤城山は上越国境から流れてくる雪雲に、すっぽりおおわれている。昨夜の強風で飛ばされてきた風花が庭にも白く残っていた位だから、赤城山も榛名山も麓から真っ白だ。しかし天気予報では風は午前中には収まり、天気も良くなると言っているので、とにかく赤城山に向かう。南面の鍋割山なら山頂に着くころには快晴になるだろうと思ったが、風はむしろ正午ごろから強烈になり、獅子が鼻コースの途中で地吹雪に追い返されてしまった。

 コース:鍋割山獅子が鼻登山口10:55→獅子が鼻12:25→急登の途中13:00(撤退)→獅子が鼻13:30→登山口14:05 (所要時間3時間10分)

 青年の家バス停までは除雪されていた。驚いたことに獅子が鼻登山口の林道の積雪は20〜30cmはあったが、すでに車の走った轍の跡があり、何とか登山口まで車で入れた。 
雪雲におおわれた赤城山
獅子が鼻がかすかに見えている。


 雪が少なければ柏倉の森林公園の駐車場から歩いて見ようと思った。昔はよく歩いたのに、崖崩れの改修工事で通行止めになって以来、もう10年近く歩いていない。 工事はとっくに終わっているはずである。しかし風車の公園の前まで来てあきらめた。ここで既にかなりの積雪が残っている。降ったばかりだからさらに上の林道が除雪されている訳がない。


 箕輪から登る気は全然なかったので、青年の家まで行ってみることにした。バスがあるから間違いなく除雪されているはずである。それから先は誰もいない(はずの)林道を、スノーシューとワカンで歩いたって運動にはなる。
 青年の家のバス停までは確かに除雪されていた。それより上へ向かう林道は除雪されていないが、驚いたことに、誰もいないどころか車の轍がある。積雪は20cm以上はありそうだ。しかし誰か入った後なら入れるだろうとその轍に乗り入れる。妻は絶対戻れなくなると大反対だ。
青年の家横を登る林道


 問題は対向車が来た時だ。すれ違う巾はあるが、寄れるだろうか。ためしに轍を外してみる。何とかなりそうだ。ぐんぐん登る。さすがスバルの4駆だ。と思ったら早速対向車がやって来た。トヨタのランクルだ。緊張したがお互いに車を寄せて難なく通過。やれやれ。さらに登ったら歩いている人がいる。4、50代と思われる若いかっこいいペアがスノーシューで林道を登っている。やっぱり考えることは同じだね。ただ車に走られたくはなかったろうな。


 獅子が鼻コース登山口に到着。パジェロミニが一台駐車していた。もう登っているらしい。隣に駐車。路側で林道の轍に近いから、バンパーがつかえるまで雪の中に押し込んだら、流石に後輪が空転して車体が沈んだ。やば、出られなくなる、といったんバックして、雪をならして駐車しなおした。
 支度していたら、小型のワンボックスも到着、我々が先に登り始める。
登山道入口


 風が強く、出だしのスギ林の中は風が吹くたびに枝の残雪が飛ばされて、雪のシャワーの中を行く。先行者の足跡をたどる。崖を登り始めると榛名山がきれいに見え、手前のゴルフ場は強風で盛んに雪煙りを上げている。
榛名山とゴルフ場の雪煙


 途中の大岩の辺りは夏でも足場が悪くて歩きにくいところだが、雪に埋まった岩が滑って難儀する。古い頼りないロープに助けられて通過。獅子が鼻の台地に抜ける。
 前に歩いた人の足跡は、私が歩幅を合わせるのが大変なほど大股で、まっさらな新雪の上を迷いなく続いている。足跡に自分の靴先がぴったり合うと、実に安定していることが分かる。足跡に合わせて歩いて見ると、先に歩いた人のレベルが分かる。
 風を避けて一息入れていたら、後から来た例のワンボックスの男性一人に追い付かれた。派手なヤッケに太い木の枝をつえ代わりに、いかにも農家のおやじさんという感じの、日焼けした顔にがっちりした体格の同年輩の男性で、風が強いねえと挨拶しながら先に登って行った。
大岩の下
ここがちょっと登りにくいんだよな


 獅子が鼻の看板の前で、休憩していた男性とまた一緒になる。”こんな天気でも今日も富士山が見えているよ、富士山が見えると山に登った気分になるねえ”、とか、”家にじっとしていると体調が悪くなっちゃうし、孫に腰が曲がちゃうよ、なんて悪口言われちゃうんでねえ”、とか、ちょっとお話。我々もカロリー補給をしたので、男性がまた先に登って行った。
獅子が鼻から鍋割山頂


 
 ねえ、雪山登りってたのしい?    まだ余裕


 林の中の急登が始まると、風は収まるどころかますます強くなってきた。地吹雪になって斜めに吹き上げる風が、林の中を渦を巻いて突き抜けていく。場所によって山を巻く風が特に強いのだろと思ったが、何処まで登っても収まる気配がない。気温は高いらしくそれほど冷え込まないのだけが救いである。先行した男性は一人で登って行ったが、無理してもしょうがないから下ろう、と言うことにした。
強風にあおられて退散


 少し下ったら男性が登って来た。あとから18人来るという。バスで黒檜山に登りに来たのだが、立ち往生した車か何かで道が全く動かなくなってしまい、仕方なく黒檜山をあきらめて、獅子が鼻コースに変更したらしい。東松山の人たちだという。もう山頂まで行って来たんですかと聞かれたので、少し上から撤退です、と答えたら、我々も相談しなきゃいけないかななんて言っていたが、後ろから押されるように登って行ってしまった。  団体の皆さんは大方リタイア組のようで、男女半々くらいかな。道を譲って待っていたので、次々、すいませんとか、もう下りですか、とか、山頂は近いですかとか、愛想よく挨拶しながら登って行った。風にビビったり、たじろいたりしている人は居ないようだった。


 みんなしっかりアイゼンを付け、先頭の3人ほどは出歯の着いた12本爪のアイゼンにピッケルまで持っていた。中には顔にお面のような風除けをつけて居る人もいたが、そう言えば出目帽は見かけなかったな。流行らないのかな。
 しんがりを登って来た人は、私たちが撤退すると聞いて、この風は大丈夫ですよ。あと30分くらいで登れるから、私たちの後についてきなさい。登れますよ。と勧めてくれたが、遠慮して下った。
バスで来たという団体さん


 また少し下ったら男性に追い付かれた。今日一番乗りですか、と聞いたら嬉しそうにそうだという。上の階段登りなんか大変だったでしょうと言ったら、”それがいいんですよ。もう最高ですよ。ガキ大将になったような気分なんですよ。”と答えた。強ければそうだろうな。”お山の大将、俺一人ィ♪♪・・”かなんか歌いながら登ったんだろうな。登るときにイノシシを見たという。そう言えばTさんも赤城道路でイノシシに会ったと言っていた。クマと間違えたよとも言う。まさか今熊は居ないでしょう、と言ったら、最近のこのあたりの熊は冬眠しない奴がいるそうだ。妻は早速熊鈴を取り出す。陽に焼けた顔まで引きしまった感じの中年の男性は、道を譲ったのに人の踏跡など大して気にもせず、あのブッシュとガラガラの岩だらけの雪の中を、腰のあたりまで雪煙りをなびかせて、飛びこむようにバサバサと下って行ってしまった。すげえなとあきれ返る。ダートのコーナーをフルスロットルで駆け抜けるプロのラリードライバーと、何年たっても真面目な優良ドライバー(私?)位の差があるかな。


 18人の団体さんが登った道は、もう踏み固められた一本の溝のようになっていて、まるっきり苦労なく下れた。
獅子が鼻を下る。


 獅子が鼻の台地に下ると、下りで気楽になったこともあって、あのすさまじい風はもう感じないが、振り返ればあの急登の山は、まだ地吹雪と雪煙に包まれていた。
 ここでまたこれから登ってゆく中高年のご夫婦に会った。
 
     まだすごい風が吹く


   崖を下りきった不動明王コースとの分岐で、そちらに向かったスノーシューの跡を見た。あの林道を登っていたペアが行ったのだろうと思った。不動明王コースの登山口から林道を下って来るのだろう。
 登山口に団体さんのバスは止まっていなかった。箕輪の駐車場に回って待っているのかもしれない。
 ゴルフ場もまだ盛大に雪煙りを上げていた。    






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