06.01.20(FRI) 観音山 西上州(埼玉県小鹿野)


 病みあがりの妻と気楽に歩ける山を探していたら、古い西上州の山の案内書の片隅に、この観音山を見つけた。標高僅か698m、標高差も300m位、これなら丁度よさそう。秩父札所めぐりの札所のお寺の裏山と言うのも面白そうなので出かけてみることにした。


コース:観音院駐車場11:40→観音院11:55-12:10→牛首峠分岐12:20→尾根12:50→山頂12:55-13:35→観音院14:00-14:15→駐車場14:25 (所要時間2時間45分)


 登山口の観音院は秩父札所めぐりの31番札所なので、近くまで行けば道路の案内板などが分かりやすくこれに従う。志賀坂峠へ向う国道299号を小鹿野の栗尾で分岐して、狭い参道のどん詰まりが駐車場。途中に水子地蔵寺(ものすごい数の水子地蔵にたまげる)がある。駐車場は乗用車だけなら20台程度はとめられそうで、トイレ完備だが、大型観光バス用の仕切りがあるので、今はガラガラだが季節がよくなれば混みそう。
観音山(観音院・東奥の院から)


 観音院の山門をくぐると約260段ほどの石の階段を登る。俳句にゆかりのある寺のようで石造りの立派な句碑が並んでいる。中に石段供養塔なるものがあって、天保14年(1843年)の年号が見える。観音院の向って左側の崖は石仏が沢山並んでいたり、西奥の院やこれを経由して観音山へ行くことも出来たようだが、現在は落石等が危険で立ち入らないよう注意書きがある。

観音院山門
仁王様は石像では日本一大きいそうだ。ここから拝殿まで250段ほどの石段を登る。
観音院拝殿
オーバーハングした岩壁の下にあり、左手に滝と不動明王様、右手に納経堂、手前に鐘楼がある。


 納経堂の裏に分岐があり右が東奥の院、左が観音山への登り口になっている。ここから丸太の急な階段を登る。やがて牛首峠から地蔵寺へのトラバース道、観音山への分岐と案内に従って登ると尾根に抜ける。かなり急で相方からはクレームが付いたが、整備されていて歩きにくい所はない。更に昔の石仏のための石を取ったと言う石切り場を過ぎると山頂はすぐで、観音院から約1時間である。
 山頂は平らな安定感のある広場で、落葉した雑木に囲まれているが展望も良く、明るく居心地がいい。正面に両神山、白岩山、二子山、右手に父不見山、城峰山など西上州の山々が見える。
 
整備された急登の道を尾根まで登ると真下に吉田町の合角ダム湖が見える。


 昔の地図には牛首峠からの尾根通しの道が記されているが、山頂から一見しただけでかなり険しそうである。岩を下るための真新しいロープがあったり、かすかな踏み跡も見えるので、今も歩かれていない訳ではないらしい。下りはトラバース道まで降りて牛首峠まで歩いて、日尾城址などを回って直接駐車場に下る周回路がお勧めコースのようである。今回は来た道を下った。

山頂
雑木に囲まれているが広く平らで気持がいい。
山頂部は小さい山ながら、西上州の山の端くれらしく垂直の崖を持つ岩峰である。


 観音山と同じ尾根続きの志賀坂峠の二子山の頂に立つと、今の我々の安全で豊かな生活?を支えるために、我々が売り渡した故郷の山々が見える。北西に叶山、振り返ると南東の尾根のはずれには武甲山がある。尾根の真ん中の白石山も同じ運命を辿りつつある。観音山は利用価値のない平凡な山だったおかげで、これからも残りそうだね。だが売り渡したものは石灰岩の山だけではないことは皆知っている。昔、金の卵と言われて集団で都会に狩り出されてきた我が同輩達よ。盆暮れに必死に故郷へ帰った君達は最早故郷が失われたことを知っている。だが一度も帰れなかった落ちこぼれの君は、心の中の故郷がまだあると思っているかもしれない。だがまさかと思うかもしれないが、君の故郷は現実にはもうない。切り崩された山とコンクリートで固められた小川と、快適に舗装された道路の脇に、中国産の御影石で建て直された立派な墓所だけがある。


ヤブコウジ 拝殿の近くでは日本では最も古い地層を見ることが出来る。


 でも気にすることはない。自然破壊が人間の歴史じゃないか。観音院の納経堂の般若心経を唱えるまでもなく、裏手の岩に残されたこの古い地層を見れば、そんな人間の営みなどほんの一瞬に生まれた泡のようなものだと言うことが良く分かる。故郷の山が六本木ヒルズの森タワーであって悪いわけはない。そこに棲むホリエモンの心根が、落ちこぼれの君の心根と多少合わないとしても、そんなことは別に新しいことでもなんでもない。気にすることはない。次の時代は次の人たちが造る。
 花も何もない落ち葉の上にヤブコウジの赤い実がなっている。故郷の家の庭にもあった。”お母さんが好きなヤブコウジよ”妻が何時もの口癖をまた口にする。




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